老子

f:id:ozuno:20230120211250j:image

天が育んだ万物には盛衰があり、地が育んだ青草には栄枯があり、水は低きに流れ、腹が減れば飯を食う、これが「大道」だ。だから聖人は無闇に動かない。待つことを知っていて、力を蓄えるからだ。星空を眺めると天の星があり、それは大昔から存在していた。数千年後もそこにあるだろう。だが小さな虫たちはどうだろう。虫の命は一夏で終わりを迎える。何十年と生きる人間をみて羨ましく思うだろう。我らの命は入れ物に入っているようなもの。体は見ることができる形のある部分だ。だからこそ痛みや飢え、不安や快楽を感じる。その感覚は体の中にある無が指示を出しているのだ。いつか人が死んで入れ物がなくなると、体の無と、外の無が一つに溶け合う。だから形あるものは必ずなくなる。形のないものが永遠なのだ。固いものほど脆く、柔らかいものほど長持ちをする。人は歳をとると歯が抜けるが、舌は抜けずに残る。舌は歯より柔らかいからだ。書は書いたものが死んでも、書の精神は永遠に残る。だからといって書に書かれたものに固執してはならぬ。だから無が道の根本であり、有は道の表面なのだ。道徳と学問を備えた人も運が良ければ、良い車に乗れて派手に振る舞える。運が悪いものでも食べていければ十分だろう。傲慢さを捨てよ。執着や妄想にも囚われるな。身勝手はいけない。そうすれば家庭でも社会でもうまくいく。これが老子の伝えたいことだ。