陰陽師の世界

最近は自粛など暗い話題ばかりなので、今日は少し陰陽師の世界の話をしてみましょうか。

 

まず霊や鬼といっても色々あって、誰も祀る人がいない、所謂無縁仏などの霊魂のことを孤魂といいます。また正常な死に方をしなかった人、戦いで死んでしまった、事故や火事などで死んだ霊魂は厲鬼と呼びます。これらの霊や鬼などは、正当な理由もなく生きている人に祟る存在に対しては陰陽師は、符、又は呪術によって撃退する事はできます。しかし中には人に騙されて殺されてしまったなど、霊や鬼にも祟る理由がある時は、呪術によって撃退はしてはいけないと考えます。

 

その場合は、鬼を供養して許しを得る方法を取らなければなりません。それらの死者の供養することも祭祀となります。平安時代とかは、貴族同士で黒魔術的な相手を呪う事もありますし、また平安京の道端に行き倒れの死体があったり、戦ともなれば供養もされない人の死体があるのが日常茶飯事でした。そんな世の中なので、成仏しない霊や鬼になったものに、よく祟られるんです。

 

そんな世の中なので陰陽道には、それらの様々な災いを消してしまう、厄を払うために祭祀をしていきます。まず陰陽五行の占術によって、祭祀をする人のその年の運命を推し量り、章表のやりかたにならって書をしたため、さらに進物を供えて、焼香して読み上げ、そして天の役所に奏上し、除厄をお願いするのを「上章」といいます。また夜中に星の下に酒や干し肉、餅や団子、進物を供え、天皇、太一、五星、列宿を祀り、書をしたためて上章のやり方に従って奏上する儀式もあります。


そうですね、例えば、先祖や地獄に落ちて苦しむ人を救う目的で行われる祭祀をすごく簡単に書き出してみますと、まずはじめに神を迎える三壇と十方(東、西、南、北、南東、南西、北西、北東、上、下)に神門を作り、また十方に安置する金銀、絹布を規定通りに祭郎や具官が供えていきます。陰陽師は、はじめにこの十方の焼香台で、東から左回りで三度ずつ焼香し、祭郎もこれに続いて焼香をしていきます。そのあと陰陽師は *発炉の呪文 を唱えて、天神の勅使来臨を請い、再び焼香台を回って焼香しながら祈りの文を唱えます。これが終わるとこの十方に加えて、日宮、月宮など計二十方にむかって祈りの文を唱え、礼拝、解結、叩頭、摶煩を行っていきます。


その次に、発爐から出官を行いますが、ここからは陰陽師の世界のイメージで読んでみてください。

 

まず陰陽師は祭壇に向かって、地に伏して瞑想します。陰陽師自身の心臓から赤い気を発せられ、それと共に陰陽師は天に昇り、百里を経て日月黄道を目指します。更に黄道を過ぎて遥かに先に紫の雲を見るとその中に天門があるのが見えてきます。陰陽師はそこで、周将軍、勅使功曹、伝章玉童に会い、目的を告げ、三神と共に章文を携えて宮殿の門下に到ります。そこでは、正一三天法師張道陵に謁見し、この度の上章のことを告げて、共に門に入ります。

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(絵にあるのは、今大河ドラマのタイトルになっている麒麟です。天界では、こんな神童が出てくるんだ〜とイメージしてみて下さい)

その後、もう一度一人の神童が出てきます。その神童が一同を案内して宮殿に入り、ここで太上神に謁見する事となります。太上神は雲霞の上着を着て、九徳の冠を被り、殿上に座しています。太上神が章文をみたあと、太一神が太上神の署名を章文に記して、仙童が章文を収めます。章文を収めた後に陰陽師は賛頌(賛頌とは言葉をつくし褒め称える。神々を賛美する詩文に抑揚をつけて読み上げること)を行い、その後、復爐を行って身神を体内へ戻す作業に入ります。


このような形で祭祀は行われていきます。昔の祭祀は結構なお金がかかります。これは今の時代だと寄付(お布施)ですね。昔の寄付の考え方は、生活で色々な罪を重ねてしまったので、災いに合わないように、災いを消してもらうように少しでも多く神々へお供えして、お供えする事を少しでも徳を積む行為として考えていたので、金銀、絹布など、珍しいものをお供えしたりします。お供え物も規定があって決まっていたりしますが。そんな感じで祭祀を、何日もやっていたりするんですよね。ここだけの話、祭祀でお供えされたものは、祭祀に参加した各陰陽家で有難くいただきます。笑

 

なんでそんな貴重なものを陰陽家がもらえるのかと言えば、今回の話の中に結構な神様方が出てきましたけど、陰陽師は祭祀の時に神様の世界にいける修行をしているということです。要は神様をこちらの世界へ呼ぶのではなくて、こちらから神様の世界にいくというイメージです。神様とお話をつけられる能力者が陰陽師だとしたら、そんな人達を怖くて敵に回せません。そのため陰陽師は日頃のお祈りや修行で、神様とお会いできる、話ができる方法を習得していたんだと考えてみてください。

 

ではいつその練習をしていたのかですが、基本的に陰陽道は星を祀るので夜に活動していたりします。就寝は午後早めに寝て、起きるのは真夜中に起きます。夜でないと星の観察をしたりできないので、完全に夜型人間です。笑。その後は太陽が昇れば午前中に陰陽寮へ行ったりして、お昼頃にお仕事は終わります。あと、修行法として調息というものがありますが、これは午前中の気しか修行に使えません。午後は死気といって体に入れてはいけないと決められていました。そんな色々な理由で夜型というか午前中人間です。

 

では最後に発炉の時の呪文をのせときますね。アンダーラインのあたりが神様の名前になっています。あと最後に太字になっている三十二天というのは、天界の事を示しています。人間界の上にある天界は三十六天(三十六種類)あるのですが、その中の三十二天界の事が書かれています。このお話は、またの機会に。

【発炉咒】

唵 無上三天玄元始三炁 太上五霊玄老君 当召出 臣身中三五功曹 左右香官使者 侍香金童 伝言散花玉女 五帝値符 値日香官使者 各三十六人出 出者厳装顕服 冠帯垂纓 整肅威儀 衛立臣身中 前後左右 関啓醮壇土地 里域真官正神 臣今(早朝・早晩)宣科転経行道 冒罪謹奏 為大日本国 (入意上奏) 其諸情悃 具載心詞 臣不量愚昧 冒領宣行 望大道之俯憐 赦小臣之罪戻 今則天上地下 咸使知聞 願得太上降下十方真正 生炁旺気 下注流入 臣等身中 冶煉三宮 清蕩六腑 飛昇金闕 感格上聞 令臣所関所啓之誠 速達逕詣至真無極大道 度人十二天上帝聖前