2020年の隠れ宿カレンダーは、去年のカレンダーより、神様や方位など追加してある箇所が増えております。そのため今年は説明をしていきたいと思います。簡単な箇所の初級、中級、上級、と順々にご説明してまいります。少しずつ覚えていってレベルアップしてみて下さい。
カレンダーに数字が記載されていますが、説明のとき番号が出てきます。番号は下記のことを示していると解釈してみて下さい。
【初級編】
初級① 1 行事
これは分かりやすいと思いますが、ご存知の通り1月1日は元旦など、この欄には、国民の休日や祝日、新月満月などの状態を表す月相、端午や七夕などの節句、特殊な期間である七曜陵逼等、年中行事や日食など様々な出来事が書かれています。行事はわかる部分も多いと思いますので、少し暦に関係する事で、月に関する月相の説明をしてみましょう。
月が真っ暗で見えない状態となっていらのが新月となります。その後、月の真っ暗な状態から一カ月が始まり、右側から少しずつ明るくなっていきます。新月から3日目が「三日月」と呼ばれていて、更に月が明るくなって右半分が見えるようになると「上弦の月」新月から大体7〜8日目あたりになります。そのあと全て明るくなりまん丸になると「満月」で15〜16日目、満月から右側が徐々に暗くなってきて左半分だけ明るい月になると「下弦の月」と言い大体21〜22日目、最後はまた暗くなっていって新月に戻ります。年の初めての新月を1月、2回目の新月は2月として数えていきます。
カレンダー見ていただくと分かりますが、2020年の初めての新月は1月25日です。これが旧暦の元旦です。中国などアジア圏では世界で使用する新暦も使っていますが、旧暦の旧正月は春節と呼ばれて休日になっていますね。日本も江戸時代までは旧暦を使っていて、明治時代から、今の暦の新暦に切り替わりました。このような事や、年中行事など、一年の様々な出来事が書かれております。
初級② 2 新暦
これは今使っている日付なので説明不要ですね。
初級③ 3 旧暦
初級①で書きましたように、昔は月をみて、何月であるのか、今はどの季節なのか、判断していました。月をみて暦を作っていたのが、中務省の陰陽寮の暦博士です。現代で陰陽寮というイメージだと、陰陽寮 = 陰陽師 = 安倍晴明みたいな感じですが、まず陰陽寮という所は、朝廷(いまの政府)の官僚組織です。そのため、きちんと役割が分かれていました。暦会館の資料を参考の図を見てみると、このような感じです。
[暦会館資料より抜粋]
陰陽頭と陰陽助を筆頭に、陰陽允、漏刻博士、天文博士、暦博士、陰陽博士とそれぞれ専門分野があり、暦は暦博士が担当、占いなどは陰陽博士が担当、時間は漏刻博士が担当となります。ちょっと細かいのですが、昔の時代で陰陽師って言っているのは、占い等を扱う陰陽博士の下にいるのが陰陽師です。陰陽博士の下の陰陽師以外でも、陰陽寮に在籍した方は陰陽の術は覚えていましたから占いは出来ました。有名な安倍晴明公も陰陽寮を退籍したあとでも、貴族等に請われれば占いをしておりました。
また暦は、元々天体の観測です。今の世の中なら国立天文台のお仕事ですね。例えば、陰陽頭をしていた安倍泰邦公が書かれた古書に北極星の観測データが残っています。
[国立国会図書館蔵書より抜粋]
上記のように陰陽寮は、陰陽頭と陰陽助の監督の元に天体の観測などをして、それを暦博士が暦として作成する作業をしていました。一年に一度、内裏紫宸殿で行われる元旦節会において、作成された新しい暦を帝へお渡しをします。これを御暦奏と言います。昔の暦はこんな形で作られていました。その後は、陰陽寮に属する陰陽師が全国の国府等にいて、生活に暦が活用されていました。
少し話が難しくなってきたので、陰陽寮の説明はこれぐらいにして、そろそろ実際の隠れ宿カレンダーの使い方に入っていきます。まずは買物欄からいきましょう。
初級④ 買物
買物欄はカレンダーの右側に掲載してあります。
これは買物をして、買ったものについている良い運気を家の中に入れてしまう方法です。例えば、26日は「財」と書かれていますが、買物をすると財運アップするという意味です。11日ならピンク色で表示されているので26日より財運が更にアップします。
買うものはなんでも構いません。食料品、日用品、日用品以外、何でも大丈夫です。また買ってあった新品の物をおろして使い始めても運気がアップします。
黒字で運気アップ、ピンク色になっていたら更に運気は2倍アップ、ピンク色で字が赤色であれば運気は3倍上昇します。1月7日は赤字、ピンク色の運と書かれているので、幸運3倍アップすると解釈します。
また下の表を見ていただくと分かりますが、財運以外でも、地は土地運、物は品物運など、色々な運気アップがあります。日々の買物で、少しずつ色々な運気をアップさせてみるといいかもしれません。
初級⑤ 酒色
これもカレンダーの右側にあります。
酒色とは、酒は飲酒、色は淫事(性行為等)を意味していて、健康を維持するための欄となります。古文書を見てみると「養生延命論、遂月酒色戒忌之日」と書かれています。お酒を飲む、また性的な行為をする、この2つの禁忌を破ると、健康状態が悪くなっていったり、冥府(あの世)にいる司命神が寿命を短くしていくと書かれてます。⚫️の印なら健康運ダウンします。26日みたいに「減」とある日は、健康状態が悪くなるのと同時に、寿命も短くなると解釈します。少し日々の生活で注意してみて下さい。現代の休肝日ではないですが、こういう日の酒色事は、ほどほどにしておくのも良いかもしれません。
初級⑥ 爪切日
これも買物、酒色と同じく、カレンダーの右側にあります。昔の具注暦にも除甲という形で書かれています。
使い方は簡単です。カレンダーに書いてある日に、記載されている手か足の爪、又は手足両方の爪を切るだけです。例えば12日は「共」となっているので、手足どちらの爪を切っても健康運アップと解釈します。また23日なら手の爪を切った方が良い解釈となります。
*「共」と書かれている日は、手足の爪の両方が大丈夫な日を意味します。
初級⑦ 19 神事
初級編で少し細かくしていきます。みていただくのは19番の「神事」です。これは神社仏閣にお参りしに行く、お祓いや祈願をしに行くなどで使用します。私たちは生活で何かあるときに神様にお願いをしに行くことがあります。神様は色々な役割を受け持っています。思い立ったときにお参りに行くのはいいのですが、できればお願い事を聞いてくれる神様がいる時にお参りできると、より効果が高いのではと思います。
例えば、隠れ宿の暦注カレンダーでは、神事の善し悪しの判断は下記の神様でしています。赤字の神様は吉の神様、黒字は災いの神様です。この神様たちのどの神様が降臨しているのかを見ています。
・安社稷日
・祠祀日
・祭天日
・神事吉日
・隠神吉日
・祠宅神日
・三寶吉日
・不祭神日
・伐日
・厭日
・厭対日
・往亡日
・道虚日
・無翹日
・晦日
・大過日
・狼藉日
・滅門日
・不禮仏日
カレンダーの見方ですが、1日をみて下さい。神事が🔴になっていると思います。赤で表示されてある日は吉の神様が沢山降臨していて、神様が力を貸してくれる日と解釈してみて下さい。次に8日を見てみます。神事は⚫️なので、力を貸してくれる神様は不在で、逆に私たちの邪魔してしまう神様が沢山いる日になります。
昔の法日雑書の神事には「厭、厭対、往亡、道虚日不可詣神社」と書かれています。また暦林問答集の無翹は「曆例云、無翹者、天一之精也。翹者猶召、無定日。厭日之後、辰爲無翹日。隨厭日無定位。故如鳥之無羽。是名無翹也。祠祀、出兵、嫁娶、皆凶也。」となっていて、無翹は天一神であり祠祀、出兵、嫁娶、皆凶だと書かれております。
天一神は、北極紫薇宮の玉皇上帝の脇に居て、とても偉い神様です。天上の紫微宮では、地皇(ちこう)と呼ばれていて11の頭を持つ神であり、戦闘を司り、吉凶を知り、天上界と地上界を渡り歩き、善行悪行を書き留め天帝に奏上する神と書かれています。神様の特徴でもあるのですが、神々は様々な名前をもっています。天一神にも別名があり、天文書では地皇と呼ばれ、六壬など占術系では天乙、又は天乙貴人、暦では中一神(なかがみ)と呼ばれていたりします。
陰陽道六壬占では、この天乙神を筆頭にして十二天将がいます。貴人の前に、螣蛇、朱雀、六合、勾陣、青龍の神々が並び、後には、天后、太陰、玄武、太常、白虎、最後に天空となり、天乙と共に天界から空の全方位(12方位)に神々が降臨します。京都は、北に玄武の山、東に青龍の川、南に朱雀の池、西に白虎の道となり、この四神がそろう地を四神相応の地と言われております。このように四神とは陰陽道の神々を指しています。
神事の説明に戻りますが、神事が⚫️の日でも、家に祀ってある神棚や仏壇、祠などは毎日手を合わせていただいて大丈夫です。神社など外に出かけてお参りする、祈願するなどの時は、なるべく🔴や⭕️の日を、選んでいただくと神様にお願いが届きやすいと思っていただくのがいいかもしれません。
あとこれは余談ですが、神棚、仏壇などに手を合わせて、お供え物をあちらの世界に届けたい時に唱える呪文があるので、下記に書いておきます。この呪文にある、幽界に居るものの名とは、神様でも、ご先祖様でも構いません。あちらの世界にお供え物をして届けたい時に、唱えてみてもいいかもしれません。
【幽界に供物を届ける咒】
1、神棚の神道作法なら「二礼二拍手」、仏壇ならお線香を立てるなど、宗派の作法に則ってください。
2、幽界に居るものの名を呼びます。
2、「早馳 風神[はやち かぜのかみ]取次ぎ給え」と唱えるます。
3、祈念、お祈りをします。
4、一礼する。
初級 ⑧ 12〜16 建築〜疾病
初級編の最後は、神事と同じ要領で、12 建築、13 移動、14 祝事、15 商売、16 疾病と色々な種類や物事に分けて良し悪しをみます。見方としては、神事と同じ解釈となります。
現代では、いい日と悪い日を見るときは、大安大吉や仏滅など六輝を用いますが、平安時代など昔の暦には書かれていなかったりします。私も詳しくわからない部分があるので、いつから記載されたなど詳細は考古学専門家の方にお任せしますが、隠れ宿の暦注カレンダーでは、六輝を記載しておりません。見方は下記の言葉を見ていただくと大体はお分かりになると思いますが、少し説明をしておきます。
12 建築
建物を作るときにみていきます。建物を建て始める、不動産の契約をする、上棟式をする、増改築を始めるなど、建物に関していつから始まるのが良いのか、参考にしてみて下さい。注意点としては、建物に関しては、12番の建築をみますが、地鎮祭や建物の土台となる基礎工事など、土地の事に関しては21の地神をみてください。
13 移動
引越しをする、会社やお店や事務所など移転するなどを決める時に参考にしてみて下さい。
14 祝事
結納、結婚式、還暦、入籍、お祝い事全般に使用します。
15 商売
開店、開業、開業届、加冠(現代なら役職を与える辞令等も含みます)、入学する日などを選択する場合に参考にしてみてください。
16 疾病
現代は医療が進んでいるので、これは記載するか迷ったのですが、去年に続き今年も記載してみました。疾病は、薬の効きの良い日はいつなのか、病気になった時に軽いのか重いのかなど症状をみる時に⚫️や🔴を判断基準にしたり、また病院へ診察や検査に行く日を選べる場合なら、少しいい日を選択する(基本は医療従事者の指示に従って下さい)、またお見舞いに行くなどの時に参考にします。医療に関しては急を要することが多々ありますので、出来るだけ状況によった判断をしてみて下さい。
⚫️◯などの日にお見舞いに行く場合は、昔的には鬼がいたりするので病鬼に取り憑かれないように呪文を唱えます。
東海の神、名は阿明[あみょう]
西海の神、名は祝良[しゅくりょう]
南海の神、名は巨乗[きょじょう]
北海の神、名は禺強[ぐうきょう]
四海の大神、百鬼を退け、凶災を蕩う[はらう]
急急如律令
を3回唱えてから病院へ入るといいかもしれません。
初級編 あとがき
色々と書いてまいりましたが、初級は、どの神様がいるのか、今日はどの方位が良いのか、細かいことはさておいといて、普通に生活しているベースに少しだけ暦の要素を取り入れてみるだけでいいと思います。爪を切ったり、買物をしたり、神様へお願いしに神社に行ったり、健康のためお酒を控えたほうがいい日はいつなのかなど、カレンダーをみてしっかり守ろうとかでなく、楽しみながら、いい日を選んでみるのも良いかなと思います。
皆様の毎日の生活が少しでも明るく、楽しいものになるよう活用して頂ければ嬉しい限りです。