荘子「斉物論」

天地は一指
指という概念を分析して、指ということばが存在としての指に一致せぬことを論証する者がいる。馬という概念を分析して、馬ということばが存在としての馬に一致せぬことを論証する者がいる。もしも、これら詭弁論者が、これによってわれわれの認識能力の不完全さを明らかにしようと意図するなら、その方法はむしろ誤りである。なぜならば、指という存在は指であってしかも指でなく、馬という存在は馬であってしかも馬ではないからだ。換言すれば、 一本の指すなわち天地であり、 一頭の馬すなわち万物なのである。