神々について

中国道教研究の第一人者の窪徳忠氏によると、神々は、天地、日月星、雷、雨、風、水、湖河、海山、道、動植物、利財、招財、授産、育児、長生、医薬、悪疫、死命、応報、家、火、油、楽器、その他の分類も合わせれば、もの凄く多くの神々がいる事となる。古代の人々は、天、日月や星、山川海、草木岩石などを始めとして、自分たちの見聞きできるすべてのものが、自分たちと同じように生きていると考えて、それに神性を認め、尊敬や畏怖の観念を抱いたと思われる。

 


その結果、昊天上帝、太陽星君、北極真武大帝、三台星、北斗星君、雷公、風伯、雨師、竜王、湖神、河伯泰山府君、海神、胡仙(孤)、花神、先蚕、財神、五毒、狐魂、虚耗などの多くの神々や悪鬼がいて、これら多くの神々は決してつねに人々を護ってくれるわけではなく、場合によっては、手ひどい災難を与え、災禍に巻き込んできたりもする。また、害や災いを与えようとして、人間の隙をねらっている精霊や亡霊もいれば、病魔は人間を病気にしたり、あるいは早死させようとたくらんでいる虚耗のような悪鬼もいる。これらの精霊や悪霊どもは、鬼または鬼神などと一括してよばれているが、これらが横行跋扈するのは「百鬼夜行」ということばが示しているように、陰の気に属する夜もあり、それらの鬼神どもから身を守る方法を考えることがぜひとも必要だったのである。

 


そんなことで、人々は山には山の神、川には川の、橋には橋の神が、それぞれいて人間を悪鬼や悪霊から護ってくれたり、北斗七星は人間の生命を縮めようとするが、南斗六星を神格化した南斗星は生命を延ばそうと努力したりもするし、昔日本で人気のあった鍾道は人を病気にかからせようとする虚耗という悪鬼を退治して、人々を幸福にするように心がけてくれ、門神は家屋敷に入ろうとする悪霊を防ぐ役割である。また雷は雷車にのって天上を走る雷公の仕業で、稲光りは電母である。また、豚やみのむしが若い女性をおかし、石臼の精が人を病気にするかと思うと、火事は赤い上衣をきた火の神があおぐためにおこり、閲魔さまの下っ端役人の小鬼が酒に酔って命ぜられた仕事を忘れてしまうなどの話もある。

 


もしこの現実社会の見えない部分がこんな状態だったとすれば、人々はまるで神々や悪鬼、悪霊などに取囲まれて日夜生活しているようなことになるわけである。そのため、僧侶や道士(日本なら神社の神官、お寺の僧侶や陰陽師)などに頼んでお祓いや供養をしたり、おふだをかいて貰ったり、寺や廟に参詣したりして、悪鬼や悪霊の災いをさけ、幸福になろうとするのである。

 


窪氏は、このように書かれています。

これは賀茂忠行公・賀茂保憲公・安倍晴明公など稀代の陰陽師が活躍していた平安時代の情景を彷彿とされせられます。ここ数年、神々の島と言われているバリ島で、バリヒンズー教の方と行動を共にする事があって、バリ島で住むバリ人の生活を見させていただいていると、毎日神様へお供物は勿論のこと、自分たちの生活圏には神様や精霊など見えないものがすぐ近くにいて、それを信じてる人達です。ライステラスの段々畑でお米を育て、両手を合わせ神様へお祈りをしている姿、道路で片膝をついて祈りを捧げる儀式をしているバリの人を見ていると、祈りの姿はとても美しく見えます。因みにバリヒンズー教の女性の方は日々のお祈りの時は、沐浴したり、綺麗にお化粧したり、きちんと正装してからお祈りをしていました。日本人も昔は神様と一緒に生活をしていたけれど、科学など高度成長期で見えるものが一気に進み、見えないものが見えなくなってしまいました。そのため今の時代に、御朱印をはじめとした神社仏閣への参拝、マインドフルネスなどの瞑想法、占いやヒーラー、スピリチュアルな方達が多くなってきたのだと思います。

 


日本の陰陽道の神様は中国の影響が多大にあります。例えば、方位の神様の災いを蒙ったので、災いを取り除いてもらう「方忌謝祭」という祭祀では、陰陽師が読みあげる祭文(都状とも言われる)というものがあります。下記は今でいう天皇陛下(途中に日本国大王と書いてあります。アンダーラインの箇所です。名は軽々しく書くものではないので、あえて名に関しては□で伏せています)の祭文ですが、途中まで記載してみます。

 

 

 

方忌謝祭 

謹啓、天曺地府、十二冥官、五方龍王、東南北西中央、青赤白黒黄帝、土公将軍、五土土府諸天、泰山府君、閻羅天子、五道大神、天官地官水官、司命司禄、本命神、開路将軍、土地霊祇、家親丈人、冥道諸神等、夫泰山者、獄為天帝孫、霊之長、東岱在威験而施者也、抑今度大将軍方犯事、其将軍者太白星、西兌方伯神是也、其祟慎太軽不、因茲如佛神加護之助如不、其祟物恠殃厄災拂為、右奉諸天神天地陰陽五行、五星、二八宿、日月諸星神、祈所者、日本国大王 □□ 恙運命長久無、子孫繁栄、天門神道儒門免札件押殊者、吉日良辰撰、十七日之祭場設、精誠抽十二座脩、銀銭白絹清供、礼奠致、…

 


最初に様々な神々の名前が連なっています。天曺地府の神様から始まり、天官・地官・水官の三官大帝、陰陽道好きならご存知でお馴染みの泰山府君など、盛り沢山です。ここに書かれている神々以外にも沢山の神様がいるので、どんな役割の神様がいるなどは、機会があれば記事にしてみます。内容を見てみると、吉日を選らんで、綺麗な白い絹や様々な供物を揃えて、十七日の間は祭場を設けますとも書かれていて、とても大変です。「えっ!祭祀を十七日もやるんですか?」と思うかもしれませんが、結構長い期間の祭祀を昔の方はやっていたりします。笑。真言宗開祖の空海公十八道の書などを見てみると、祭祀をされる方がお泊まりになられる家まで建ててしまい、その建物が建ち終わったら、その方を祭祀の前日までにお呼びして、僧侶の方は祭祀の前から精進料理を共にしたりしています。そのあと祭祀の当日は祈願者の方と朝から金堂(金堂とは本堂のこと)に入るなどをしていました。私は僧侶ではないため解釈に間違えがあるかもしれません。詳しくはその道の方にお聞きしてみてください。間違えていたらすみません。祭祀のために建物を建てると言うのは、昨年陛下なされた大嘗祭の大嘗宮なども、その時の祭祀に使うために建てたりするので、現代でも同じところがあるのかも知れません。

 


話が逸れたので戻しますと、今、世間ではコロナで経済活動が止まっていますが、昔の時代ならばウイルスを撒き散らしているのが、疫鬼(陰陽道なら瘟部と言われる疫病を撒き散らす鬼)で、今は小鬼が世界のいたるところに出没してウイルスを撒いていると考えるところです。時代錯誤になるので大きな声では言えませんのでここだけの話ですが、年末などに塚越屋さんの鬼を集めたりしますと、腕と足が長く細い小鬼が、お菓子とお酒に群がってきます。いつもはどこに潜んでいるのかわからないのですが、祭祀をするとお菓子とお酒に釣られてか出てきます。笑。人間もそうですが、小鬼はお腹を減らしていたりするので甘い物はてきめんです。

 


コロナでいつもよりは時間のある方もいると思い、少し長く書いてみましたが、神様のお話はまたの機会という事で、今回はそろそろお開きとします。見えない世界のものが近くにいると思うと、色々な意味で世界が広がります。見える、感じるという方は、子供など低年齢に多いとは思いますが、もし貴方に見えないものを少しでも感じる事があれば、それは見えないだけで本当はそこにいるのかも知れません。ペタペタと家を歩いている足音や、リビングにいて後ろの暗い闇からじっと見られているような気配がしたら、それは祖先の方や神様かも知れませんし、怨念をもって成仏していない霊や災難をもたらす鬼、もしかしたら他人から恨まれていてまとわりついている生霊かも。

 

では、また。